世の中がEVに向けてまっしぐらである。これに対して、余りにバラ色に考えているのでちょっと別の視点から考察してみたいと思う。なお、本当は世界で見た方がいいのだが、とりあえず日本に限定して考えてみる。
平均電費を6km/kWh、平均走行距離6千km/年とするならEV1台で年間で1000kWhの電気を消費することになる。一般家庭のエネルギー消費は約3600kWh/年なので、EVを持つ人はエネルギー消費が30%位増えるイメージとなる。
たかが30%と言うが、実は電力供給は綱渡り状態に陥っている。最大電力消費時には、余力が1%とか、2%とかになりかけている。何を意味するかというと、あとちょっと消費量が増えたら停電、ブラックアウトになりますよ、という状態。電気は常に供給量が消費量を上回っていないといけない。いつ何時も。それが、EVの充電でどうなるか?
GWやお盆休み、多くの人が外出をする。今はコロナで見えにくくなっているが、繁忙期の高速道路の混み具合はご存じの通り。通常の何倍もの車が動き出す。すると、マクロでは30%でも、ミクロ、短期で見るととんでもないことが起こる。
リーフは60kWhの電池を積んでいる。遅かれ早かれ、これが100kWhとなる時代が来る。日本の総乗用車数6千万台の車の内、1千万台が連休前に充電を行うと考えよう。それも、100kWhずつ。これまた極端なお話で、急速充電で5分で充電する。100kWhを5分、つまりは1/12時間で充電するので、5分間は1200kWの出力が必要となる。一般家庭が3600kWh/年と書いたが、これは1年365日24時間での話なので、平均的には約0.4kWということになる。1200kWって、3000世帯分の電力ということ(合っているよね?)。
各車が5分ずつ充電するので、1千万台の車だと5000万分、約400万時間もの間1200kW、3000世帯分の電気を供給し続けなくてはいけない。実際は400万時間ではなく、多くが連休前の数日、ざっというと4日(約100時間)以内で処理するなら、3千世帯×400万時間÷100時間=12千万世帯分の電気、ということになる。日本の世帯数って6千万世帯もないので、連休4日前からは今までの3倍の電気を供給しなくてはいけない、という計算になる(ちょっと極端だけど)。
ということを考えた上で、大半をEVで乗り切るなら、
- 充電は予約制、予約時間以外は充電ができない → 旅行何日前?ほぼ無理。
- 急速充電はできない、できても値段が跳ね上がる(100円/1kWhとか。これなら事業化できる)
- 基本は自己発電(太陽電池一択)で充電
インフラ考えると大半をEVにするのは難しいんだけど、不可能ではない。でも、こんな現実があることだけは間違いない。