吉武様(吉武技術コンサルティング)と協業し、AC-IR計測技術の研究開発を行って参りました。
電池の特性は、AC-IRを取得するのが一番なのですが、1KHzから0.1Hzの正弦波を電池に印加して解析する場合、
・充電と放電を繰り返すために充電できる電力が必要で、装置が大型化+高価になる
・正弦波の周波数を正確に制御し、徐々に切り替えていく制御も必要となる
・0.1Hzでの測定に10秒かかり、その後0.11Hzで9秒、と測定にかなりの時間がかかる
他に選択肢がない場合、これでやるしかないのですが、もう少し何とかしたいということになりました。
我々の手法では、放電抵抗+電子スイッチを使用して矩形波放電制御を行います。その時の電流と電圧を計測し、フーリエ変換した後にインピーダンスを算出します(複素数になります)。本来であれば、充放電で測定すべきですが、今回は放電だけにしています。これで算出した値に対し、高次項を利用してコールコールプロットを作ります。
この手法の利点は、
・放電しか行わないため、電源としては制御用に必要なだけなので低消費電力(約300mW)
・矩形波制御を個々に4回行うだけにしており、連続制御が必要ない(波形の連続性の制御が不要)
・約0.2Hz(5秒)、1.5Hz(0.6秒)、12Hz、100Hz程度の4か所計測だけなので、理論的には最速6秒程度で計測が終わる
という特徴があります。もし、最低周波数が0.2Hzよりも早くていいとなれば、もう少し計測時間を縮められます(測定点も減らしてよければさらに短縮可能)。現状は0.2Hz→0.6Hz(3次項)→1.0Hz(5次項)→1.4Hz(7次項)→1.8Hz(9次項)と高次項を0.2Hz計測から算出し、この後は1.5Hz計測から4.5Hz、・・・と算出しております。これで、0.2Hzから1kHzまで曲線が繋がります。
ただし、フーリエ変換に多少問題があり、この部分を特許化して解決しています。ここについては、ここではご説明しません。本来充放電で計測するのに、放電だけで大丈夫なのか?と思われるかもしれませんが、どうやら電池の内部特性は充放電でほとんど変化ないようです。以下が結果です(性能の異なる2種類の電池を計測、緑が良品、青が劣化品。軸の数値は電池素性を明かさないようにするため、削除してあります)。
三角は弊社装置で計測した結果、丸は標準のAC-IR測定器で計測した結果です。流石に高次項(31次とか)になるとずれてきますが、他は概ね同じものが算出できます。Fittingを行えば、結果はほとんど同じになります。なお、この計測にかかっている時間は約14秒です。もし、ご興味がある場合には、是非ご連絡ください(といっても、連絡先を非公開にしているので、弊社への連絡が取れないかと思います。その場合、サンライズシステムズ株式会社までお問い合わせください)。